画家・川合玉堂も愛した奥多摩の渓谷美 御岳渓谷 彩り鮮やかな初秋の散策
みたけ   けいこく
 東京で日帰りで自然を満喫できる奥多摩はお気に入りのスポットですが、そのなかでもイチオシは今回ご紹介する「御岳渓谷」。桜の季節、新緑、紅葉、、、。御岳はどの季節もそれぞれ絵に描いたように美しく、何度でも訪れたくなる本当にお勧めのスポットです。

 御岳周辺の美しい自然美を愛して晩年ここで素晴らしい絵画を描き続けた川合玉堂画伯の記念館は御岳渓谷の見所の一つですが、その他にも「櫛かんざし美術館」、「御岳美術館」など見所が自然の中に溶け込むように点在しています。それらを訪れながら気ままに散策し、景色の良い食事処で休憩などすると最高にいい気分♪ 天気の良い日は、河原でお弁当広げて気軽にピクニックもまたいいかもしれません♪
JR青梅線 沢井駅

澤乃井園

寒山寺

《遊歩道散策》

玉堂美術館

《遊歩道散策》

せせらぎの里美術館


約3時間
(玉堂美術館20分含む)

 以前、ばっちり真っ赤に紅葉した時期の御岳に訪れたことがありますが、それは確か11月の初め頃。今年は例年より紅葉の見頃が遅かったので、「ちょうど良い時期かも」と思って11月中旬に出かけてみました。

 良い天気の日でしたが、朝のんびりして出遅れてしまい12時過ぎに家を出発。西武線で拝島駅まで行ってJRに乗り換えて、青梅駅に1時半ごろに到着。ここでJR青梅線への待ち合わせが15分ほどあるのですが、15分といっても時間は貴重。その時間に駅のホームで立ち食いうどんを食べました。お店の名前は「青梅想い出そば」。奥多摩方面に電車で行く時はいつもここでうどんを食べているのですが、とてもレトロな雰囲気で、写真の撮り甲斐もあります。お店の側面にはレトロなポスターなどが貼られています。

青梅駅ホームの「青梅想ひ出そば」
 ▲レトロさな雰囲気の「青梅想ひ出そば」  ▲ホームの待合室もレトロな雰囲気

 そして、目的の沢井駅には2時ごろに到着。私はやっと今到着したというのに、もう駅には帰ろうとする人たちもたくさんいて、ちょっと驚きでした。沢井駅の近くには清酒「澤乃井」で有名な小澤酒造があります。無料の酒蔵の見学(1日4回 予約制 月曜休)ができます。ガイド付きで酒造りについての説明してもらえるので、時間がある場合はおすすめです。私はすでに見学したことがあるので、そのままま「澤乃井園」へ。 

 「澤乃井園」は小澤酒造の直営で、売店や軽食の販売のほか酒造見学の受付などもしていて、御岳渓谷観光の拠点とも言える場所で、紅葉や桜の時期には観光バスなどもやってくるので多くの人でにぎわいます。今日も人がたくさんでした。
 隣にある「まゝまごと屋」も小澤酒造の料亭ですが、風情ある渓谷の流れを眺めながら豆腐と湯葉をメインとしたヘルシーな料理を堪能できるお店です。といっても、ここは予約が必要なので、まだ行く機会には恵まれてませんが、、。
 「澤乃井園」と「まゝまごと屋」の一帯は紅葉の名所で、盛りの時期の真っ赤な色彩は素晴らしいものです。今回は残念ながら、まだちょっと赤くなってきた程度でした。また、桜の名所でもあり、春の見頃にも一度出かけてみる価値ありです。

沢井駅周辺案内図
※「小澤酒造」のオフィシャルサイトを検索すると、澤乃井園・まゝまごと屋・酒造見学・櫛かんざし美術館などの情報が詳しく紹介されています。
澤乃井園
澤乃井園
「まゝまごと屋」まゝまごと屋

 続いて澤乃井園から「楓橋」を渡って川の向こう側へ行きます。橋の途中からは多摩川の流れが一望できます。川を渡ったところには寒山寺があり、さらに左手のちょっと下流に「櫛かんざし美術館」があります。ここも小澤酒造の美術館ですが、櫛とかんざしだけでなく江戸から昭和にかけての装飾品や工芸品など充実した展示で見応え十分です。また、ここはとても見晴らしがよく、美術館の外を散策してみるのもなかなかのものです。

「楓橋」 楓橋からの渓谷のながめ 櫛かんざし美術館
澤乃井園から見た楓橋 楓橋から渓谷のながめ ちらっと見えている建物が「櫛かんざし美術館」
楓橋より見た寒山寺             寒山寺
 明治18年に時の書家・田口米舫氏が中国に遊学した際に姑蘇城外の「寒山寺」を訪れ、日本における寒山寺の建立のために釈迦仏像一体を主僧の祖信師より託されたのに始まります。 
 帰国した田口氏は、諸国遍歴の末に、この澤井の地を「寒山寺」建立の地と定め、その後、青梅鉄道の社長でもあった小澤酒造の小澤太平氏の尽力により昭和5年に落慶しました。

寒山寺

 続いて、寒山寺の脇から御嶽駅方面への遊歩道へ。澤乃井園側にも遊歩道があり、そちらの方が人がたくさん歩いているようでした。寒山寺側からの方が反対側の紅葉が綺麗に見えそうだと思ってこちらを歩いたのですが、あまり人がいなくてなかなか雰囲気のある山道でした
 数ヶ月前の台風の影響か、木が倒れていたり、枯葉がたくさん落ちていたり、、。そういえば、ちょっと木々の密度が薄くかんじるのも、激しかった台風のせいなのかなと思いました。

遊歩道 寒山寺近く 木々に囲まれた遊歩道
遊歩道 鵜の瀬橋近く 遊歩道からの眺め

 
見晴らしの良いところで、河原に出て写真を撮りました。右下の写真に見えている橋は「御岳小橋」。その先には「玉堂美術館」などがあって、ちょっとした観光のスポットです。
 私の歩いた側の遊歩道はこのあたりで行き止まりになっているので、上の自動車道に出て歩いていきました。川の反対側の遊歩道はまっすぐ「御岳小橋」まで続いているので、途中の「鵜の瀬橋」で向こう側に渡っておくと回り道せずにゆったり散策することができます。

河原より 河原より御岳小橋

 
JR御嶽駅から近い御岳小橋の周辺エリアは、沢井地域と並ぶ御岳渓谷の見所です。ここには「まゝまごと屋」と姉妹店の「いもうと屋」があり、川の流れを眺めながらお食事をすることができます。気軽な雰囲気で人気のあるお店なので、たいていしばらく待たなくてなりませんが、おすすめのお店です。「いもうと屋」の奥の方には川合玉堂美術館があります。美術館の手前のイチョウが美しいのも有名です。  

お食事処「いもうと屋」 玉堂美術館前のイチョウ
食事処「いもうと屋」 美しいイチョウの左奥が玉堂美術館

「玉堂美術館」は、小さな美術館なので10分〜15分ぐらいあれば十分鑑賞できます。日本画の巨匠・川合玉堂は奥多摩の自然を愛してたくさんの美しい風景画を描いていたことで知られていますが、実際に玉堂画伯が描いた御岳の地で鑑賞すると格別のものがあります。季節ごとに展示作品が替わる替わるので、私は御岳を訪れた度になるべく見学するようにしています。

玉堂美術館」 玉堂美術館の画室
玉堂美術館の正面入口 本館から廊下でつながっている画室
玉堂美術館前からの眺め
玉堂美術館前からの眺め  川の反対側より見た玉堂美術館

 玉堂美術館を出ると3時半を過ぎたところで、すでに少し日が陰ってきはじめました。河原に降りてしばらくで川の流れを楽しんだ後、御岳小橋を渡って反対側の遊歩道をさらに歩いていきました。ここから先はなだらかな渓流美を間近に眺めながら、のんびり散策することができます。

御岳橋
建物の脇の小道から見る御岳橋 渓谷美の美しい御岳小橋の周辺

 
約30〜40分ほど歩くと、奥多摩フィッシングセンターなどがあり、再び人家も並ぶ少し賑やかなエリアに到着します。ここには「御岳美術館」と「せせらぎの里美術館」という2つの見所があります。どちらも以前見学したことがありますが、それぞれ見応えのある美術館です。「御岳美術館」は高村光太郎の彫刻のほか、多摩で活躍した近代の画家や彫刻家の作品が展示された美術館で、「せせらぎの里美術館」は民家風の建物の中に絵画や工芸品が飾られた独特の雰囲気の美術館です。

御岳美術館 せせらぎの里美術館
御岳美術館 せせらぎの里美術館

 ここに到着した時点で4時半でした。もうすっかり暗くなってきていたので、慌てて今来た道を急ぎ足で戻りました。急に暗くなったので、ちょっと小走り気味に歩き、5時前にはJR御嶽駅に到着することができました。秋の夕暮れは一気に暮れるので、十分注意が必要ですね。もうちょっと早くから出かけていればのんびり落ち着いて紅葉散策できたかなーと思いました。
 まだ、紅葉の見頃にはちょっと早めで、真っ赤な色彩はあまり堪能することができませんでしたが、その分、初秋の明るくカラフルな秋の色彩を味わうことができ、それはそれでなかなかの満足でした。
(2007・11・14)

       JR御嶽駅
   JR御嶽駅