平林寺

埼玉県・新座市、武蔵野の野火止台地に約13万坪の境内を有する臨済宗の禅寺で、正式名は「金鳳山平林禅寺」。臨済宗妙心寺派の別格本山という位置づけで、その歴史は南北朝時代に始まって約700年も続いています。自然にあふれた境内には四季折々の木々が見事に調和し、今もその歴史の重みを感じることのできる佇まいを保っています。

 今年2007年は例年よりだいぶん紅葉の時期が遅れていましたが、12月の初めに新座の平林寺に行ってきました。埼玉県新座市の武蔵野の森に囲まれ、紅葉の名所としても名高いところです。
 JR武蔵野線の新座駅から歩きましたが、平林寺の入口となる総門までは遠回りしたので、約30分ぐらい歩きました。 紅葉のチラチラ見える平林寺大門通りを歩いていくと、平林寺の前に「睡足軒の森」というちょっとした庭園があったので、そこを先に見学しました。

 続いて、お目当ての平林寺へ。 ちょうど紅葉の見頃とあって、平日でも人でいっぱいでした。
 境内に入るやいなや、感動の一言! まさに「紅葉の名所とはこういう場所を指すんだな」と思わせる見事な彩りでした。まるで京都の寺社を訪れているような錯覚に陥ります。
 天気の方が、あまり晴れ間がなく、曇りがちだったのがちょいと残念でしたが、総門〜山門〜仏殿を写真を撮りながら歩き、さらに奥の方の遊歩道を歩きました。大河内松平家の墓所の周囲をぐるりと森が囲んでいます。約10分ほどで1周しましたが、境内の中は程よく紅葉していて良い散策コースでした。また、桜や梅などの季節にも訪れてみたいなと思いました。
 約1時間弱の平林寺散策の後は陣屋通→野火止用水方面へさらに散策を続けました。
(2007・12・4)

川越街道に面して建つ総門は萱葺きの切妻造りで、1648年に京都詩仙堂の石川丈山によって揮毫された「金鳳山」の山号額を掲げている。

入口を入ってすぐ、総門から山門までの参道は紅葉の見所のひとつ。真っ赤に輝く木々の色彩に感動!

山門と紅葉 平林寺山門
平林寺のシンボルともいえる山門は、茅葺きの重層入母屋造りで丈山筆の「凌霄閣」の額を掲げている。
仏殿 境内案内図
      ★歴史★

 平林寺は、南北朝時代の1375年に武蔵国騎西郡渋江郷金重村(岩槻市)に岩槻城主の大田備中守によって創建され、鎌倉・建長寺の住持をしていた石室善玖禅師により開山されました。

 その後、1590年に豊臣秀吉の岩槻城攻めの際に伽藍の大半を焼失しましたが、翌年、鷹狩りのためにこの地を訪れた徳川家康の朱印状を得て再建されることとなり、中興開山された平林寺は、大河内氏の庇護の下、旧観を取り戻しました。
 そして、1618年に大河内秀綱が死去して以来、平林寺は大河内氏の霊廟となりました。その後、秀綱の孫の信綱が長沢松平家に養子に入り、家名を大河内松平家としています。

 この松平信綱は3代将軍・家光に仕えて出世し、老中まで登りつめた人物。川越藩主となった際に、江戸と川越の中間にある所領・野火止の地に先祖の霊廟である平林寺を移したいと願いました。

 当時、野火止の原野は枯れ地だったので、実現不可能かに思われました。しかし、多摩川上水完成の功績により分水を許されて水が潤うようになり、信綱の子・輝綱によって平林寺は岩槻から野火止に移されました。現在ある平林寺の総門・山門・仏殿は岩槻から移築されたものです。 

山門の奥にある仏殿は、総門・山門とともに岩槻から移築された築350年以上の禅宗様式の唐様の建物。本尊として釈迦如来像が安置されている。
鐘楼
山門から仏殿に向かう左側にある>経蔵野火止移転後に建てられたものとしては歴史ある建物。 
  
仏殿の右側を進んでいった先にある鐘楼。元々あったものは焼失したため、現在のものは再建されたもの。
木小屋 森林遊歩道
左は敷地内に残る木小屋
境内内の遊歩道へ。大河内松平家の墓所などがある。
  ★平林寺と野火止用水★

境内を流れる野火止用水は、当時、藩主であった松平信綱により1655年(承応4年)に開削された用水路。玉川用水を多摩郡小川村から引水し、野火止台地から新河岸川に至るまで全長25キロにも及んでいる。川越藩は水のない原野だった野火止台地に飲料水を供給し、耕地を開発して農民を入植させ、計画的に野火止の開発を行なった。

 その後、輝綱の子の松平信輝は下総国古河に転封となったため、平林寺は後に川越藩主となる柳沢吉保の所領になったことなどもありました。しかし、その後は川越藩領とはならずに信綱の六男で上野国高崎藩主の松平輝貞に与えられ、再び大河内松平家の支配するところとなり、現在に至っています。

 【アクセス】
  JR武蔵野線 新座駅より徒歩約30分

  ★バス
   東武東上線:志木駅、朝霞台駅より 
   西武池袋線:ひばりが丘駅、大泉学園駅、東久留米駅より
   JR武蔵野線:北朝霞駅より           

▲入口近くにある手のべうどんの「たけ山」    ▲総門のある平林寺大門通り